第42回「小沢海外功労賞」受賞者

当協会は、第42回「小沢海外功労賞」の受賞者として個人5名を選出した。
「小沢海外功労賞」は、当協会初代会長 故 小沢久太郎氏の醵金をもとに、同氏の国際協力にかけた情熱を永く記念するために昭和55年に創設され、海外での国土開発または建設分野の国際協力に功労のあった個人・法人を表彰するものである。昨年度までに、個人176名、法人52社が表彰されている。
第1回~第41回受賞者(PDF)

第42回「小沢海外功労賞」受賞者

北田 郁夫 氏

三井住友建設(株) 国際支店 理事

「カンボジア国ネアックルン橋梁計画」では現場代理人として、長時間の待機が強いられていた国道一号線のボトルネックを解消すべくメコン川を横断する橋梁と取付道路を建設する工事を遂行した。工事開始直後に見つかった不発弾の影響で約4カ月間工事が中断されたが、土木技術者としての豊富な知識と経験、高い統率力を活かして工程促進対策を立案・実行し、当初の工期通り工事を完成させた。また、研修や講習を繰り返し、同国の技術者へのOJT教育にも尽力した。本橋の開通により同国の発展に大きく寄与すると評価され、フンセン首相から勲章が授与された。併せて本橋が描かれたカンボジア国の新500リエル紙幣が発行されるなど、施主及びコンサルタントから高い評価を得た。また、本工事はJICA理事長賞、土木学会賞田中賞、プレストレスト工学会賞(PC工学会)、第1回JAPANコンストラクション国際賞を受賞した。現在は、バングラデシュ国ダッカにて現場代理人として都市交通整備事業に従事している。

高橋 佳久 氏

(株)オリエンタルコンサルタンツグローバル 道路交通事業部 道路技術部 プロジェクト部長
「アフガニスタン国カンダハル‐ヘラート間幹線道路整備計画」においては、幾多のタリバン軍による襲撃や、施工業者スタッフの誘拐等の事件、事務所に投げ込まれたロケット弾等による妨害を乗り越え、首都カブールにて遠隔操作での業務を行い、2009年5月に全線114kmに及ぶ道路改良工事を完了させた。「アルジェリア東西道路」は、日本企業連合が設計施工で請け負った約400kmの総工費6,000億円に及ぶ当時世界最大規模の高速道路建設である。このうちの第7工区123kmの設計業務を下請けとして受注した。40カ月で完工という過密スケジュールの中、基本設計の承認を待たずに施工が始まり、施工図を作成しながら基本設計を見直すという前代未聞の設計業務を担い、遂行した。「パキスタン国ADB国道開発セクタープロジェクト」においても、雨季の降雨により施工中の拡幅道路の約半分が水没し、4カ月間の中断を余儀なくされたが、数回の設計変更を経て計画通り完工を成し遂げた。

長尾 日出男 氏

大日本ダイヤコンサルタント(株) 海外事業部 プロジェクト担当部長
1999年から2002年まで、JICA長期専門家としてエチオピア国に赴任し、作成した橋梁維持管理マニュアルを基に橋梁管理システムを整備した。これは同国道路公社の正式マニュアルとして活用されている。2005年から、JICA長期専門家として、フィリピン国公共事業道路省の組織運営体制、既存のマニュアルや管理システムを調査し、課題を抽出した。これを踏まえてプロジェクト計画の枠組みを立案し、技術協力プロジェクト「フィリピン国道路・橋梁の建設・維持に係る品質管理向上プロジェクト」の実施に結びつけた。同プロジェクトでは、道路・橋梁の維持管理に係るマニュアル類を整備し、OJT等を通して改訂を行った。また、公共事業道路省(DPWH)職員を対象としたパイロットプロジェクトの実施による技術移転、補修工事記録を参照できるデータベースシステムの構築を行った。同氏は現在、「ザンビア国橋梁維持管理能力向上プロジェクト」において、橋梁日常維持管理及び橋梁補修パイロットプロジェクトを実施し、その中でセミナー/OJTを行っている。

野々垣 昌宏 氏

大日本土木(株) 海外支店 土木部 参与
離島・島国での工事では、資機材が限られ、さらに建設業経験者が少ない中、綿密な資機材の調達計画に加え、現地作業員の確保及び新規作業員への教育指導を行った。
南アフリカ国では、現場が広範囲に点在する井戸工事に従事した。治安の悪い環境下、1日200kmを超える現場間移動で交通事故や犯罪に巻き込まれるリスクの多い中、現場代理人を務めた。リベリア国では、ラムサール条約の制限のある湿地帯での工事に従事し、環境への慎重な配慮と、工程管理への注意を要する中で施工管理を担った。これらのアフリカでの業務は、エボラ出血熱の蔓延や新型コロナウイルスの流行により工事は延期を余儀なくされた。
タジキスタン国の道路工事では、内陸国であるため資機材の調達は長距離の鉄道を利用して輸送した。また、日本とは異なる文化、思考の人々と工事を進めるという環境下で、現地の人たちを指導し建設技術を伝え、良好な人間関係の維持に努めた。本工事は、第2回「JAPANコンストラクション国際賞」を受賞した。

山下 佳久 氏

日本工営(株) 交通運輸事業本部 道路事業部 道路橋梁整備部
「ネパール国シンズリ道路建設事業」では、第2次フィージビリティ調査参加後も業務主任として事業初期の詳細設計、施工監理を主導し、15年の長期に亘り本事業の成功に貢献した。雨季の豪雨を考慮しながら地形に調和した道路線形を選定し現地仕様のガビオン擁壁と高度なジオテキスタイル補強土壁の適材適所の採用、既存の灌漑施設の機能保全策、流末まで細やかに計画された道路排水施設等を実施した。本事業は、輸送距離の短縮、沿線の社会経済開発に大きく寄与したとして、JICA理事長賞、土木学会技術賞、JAPANコンストラクション国際賞を受賞した。2009年から従事した「ネパール国コミュニティ交通改善事業」においては、業務主任として基本設計調査、詳細設計、入札支援及び施工監理を主導した。現地コンサルタントは設計や品質管理経験に乏しく、さらに工事を実施する現地の中小建設業者は品質や安全に対する意識が低いという状況の中、スタッフに道路・橋梁の技術的要点や品質安全管理のノウハウを指導しながら事業を完成させた。