第43回「小沢海外功労賞」受賞者

当協会は、第43回「小沢海外功労賞」の受賞者として個人3名を選出した。
「小沢海外功労賞」は、当協会初代会長 故 小沢久太郎氏の醵金をもとに、同氏の国際協力にかけた情熱を永く記念するために昭和55年に創設され、海外での国土開発または建設分野の国際協力に功労のあった個人・法人を表彰するものである。昨年度までに、個人181名、法人52社が表彰されている。
第1回~第42回受賞者(PDF)

第43回「小沢海外功労賞」受賞者

河合 信之 氏

清水建設(株) 土木国際支店 土木部 上席エンジニア

清水建設に入社後、33年間海外業務に携わってきた。同氏のモットーは人材育成と地域発展による国際貢献であり、様々な大規模工事においてプロジェクトマネージャーとして、卓越した技術知識、管理能力、コミュニケーション能力を駆使し、プロジェクトの完成に導いた。インドネシアの僻地においてLNGプラントを建設したプロジェクトは、本邦企業が開発・運営を主導し輸出するLNGプロジェクトの第1号案件であった。コンクリート製造とパイプラック・LNGタンク構築という重要工事を完成させた。地元の人々の考えを尊重し寄り添った指導を実行しつつ、品質においては、熟練労務が入手困難な僻地環境を克服するため、設計・施工計画時から作業手順の単純化、品質不具合発生ゼロを実現した。また、啓蒙活動、安全意識のある作業環境作り、作業員教育を日々実施し、無災害514万時間を実現した。ベトナム国ホーチミン市では、ベトナム初の地下鉄シールドトンネル工事を貫通させ、現地の技術者にきめ細かな技術指導や勉強会を開催し、シールドの本邦技術を伝承した。また、KY運動や安全サイクルの確立など、日本式安全手法を導入し、プロマネ在任5年間で無災害900万時間を達成した。
同氏は、母校の学校報や建設マネージメント誌へ寄稿するなど、海外工事プロジェクトマネージャーとしてのプロジェクト管理手法や心構えを日本の土木技術者に遍く伝えている。また、「日本は技術を現地技術者に伝承する。その後は現地技術者自らが類似工事を行えるようにすること」の重要性を常々語り、実践してきた。

鈴木 雅人 氏

(株)オリエンタルコンサルタンツグローバル 総合開発事業部 港湾部 参事

1979年から現在までの45年に亘り、国内外における港湾関連の調査・計画・設計・施工監理業務に携わってきた。2014年から2024年まで、モザンビーク国で「ナカラ港開発計画」に従事し、北岸壁の増深・拡張とコンテナヤード、バイパスアクセス道路、エントランス等を整備した。同氏は、契約、設計、施工監理まで一貫してプロジェクトに参画した。開業式には、モ国大統領のほか各国の大統領も参列した。
トンガ王国の首都では、大型船を係留する施設がなく不便であったが、同氏は総括として「国内輸送専用埠頭改善計画」に従事し、自然風を活用した空調システムや環境に配慮した電力・水供給システムを採用した専用の埠頭を整備した。サイクロンの直撃などの困難も乗り越え、2018年に国王臨席の下で竣工式典が行われた。
フィリピン国「スービック港開発計画」は、既存の岸壁のリハビリと新コンテナターミナルの整備を行うもので、同氏は施工監理のプロジェクトマネジャーとして従事した。鋼材単価の高騰と供給不足に見舞われたが、設計変更や材料の現地調達への変更などで、困難を乗り越えた。フィ国の政権交代により環境影響評価の再提出が要請されたが、丁寧な協議により、当初の評価の妥当性が認められ、工事中断を回避した。
また、フィ国「バタンガス港第2期開発計画」では、同氏は港湾・構造技師として常駐し、地形の特質性から近年では稀な掘込み港湾を採用し、完成に導いた。こうした実績が評価され、2022年には「港湾功労者表彰」を受賞した。

高碕 太郎 氏

日本工営(株) 鉄道事業部鉄道技術部 ホーチミン市MRT建設開発事務所 所長

日本工営に入社後、44年に亘り、海外部門に所属している。入社後約20年間は主にダム・水力発電の土木技術者として活躍し、その後海外民活・IT関連事業の形成・推進業務を経て、現在ベトナム国「ホーチミン市MRT建設事業」を主導し、本邦鉄道技術の移転と普及に係る多大な貢献により相手国政府から高い評価を受けている。
スリランカの電力供給不足解消を目的とした「サマナラウェア水力発電事業」では、5年半に亘り一貫してプロジェクトに尽力し、電力事情改善に貢献した。本事業ではダム完成後、貯水池からの漏水の発生が問題となったが、検討の結果、水中ブランケット工法を採用した。この工法は世界でも例の少ないものであったが、2.8㎥/sの漏水を1.9㎥/sに減少させることに成功した。
民活事業においては、ベトナム国「ビンフック省投資環境改善事業」の円借款事業立ち上げに努めた。同事業はインフラ整備と投資受入れ体制の強化によってその後の日本企業の海外進出・海外投資の促進及び地域経済活性化に大きく貢献した。
2013年以降は、ベトナム国「ホーチミン市MRT建設事業」の責任者(所長)としてホーチミン市都市鉄道1号線の設計・施工監理のコンサルティングサービスを主導してきた。本事業は交通渋滞及び大気汚染の緩和、地域経済の発展に寄与するものであり、2024年10月から試行運転、2024年内に開業を目指している。